いわゆる「106万円の壁」や「130万円の壁」などとといわれる年収の壁について、一定の政策がとられます。そのうち「106万円の壁」の対策では、一定の助成金が支払われます。今回は、この助成金の概要と収入計上時期を確認しましょう。
「106万円の壁」の“106万円”とは、ご存じのとおり扶養の範囲内で働きたいスタッフに対する給与の年収のボーダーラインを指します。12月になると、この“106万円”を超えないように、人員調整に苦労されているクリニックもあるでしょう。
106万円を超えることで、夫や父親などの扶養から外れたり、社会保険の加入が必要になったりと、スタッフやそのご家族の負担が増えることが“壁”となっています。
このような壁を乗り越えてもらおうと、国(厚生労働省)から「年収の壁・支援強化パッケージ」が公表されました。その中には、一定の要件を具備することで助成金が受け取れるコースがあります。
具体的には、キャリアアップ助成金に「社会保険適用時処遇改善コース」が新設され、対象となるスタッフを新たに社会保険に加入させるとともに、収入を増加させる取組を行った事業主を対象に、対象となるスタッフ1人あたり最大50万円の助成金が支給されます。
対象となるスタッフとは、2023年10月1日から2026年3月31日までの間に、新たに社会保険の適用となったスタッフを指しますが、その他にも要件があるため注意しましょう。
この助成金の支給を受けるには、事前にキャリアアップ計画書を提出し、コースに応じた取組を6ヶ月間継続した後2ヶ月以内に支給申請をします。
収入(収益)計上時期は、原則として「その収入すべき権利が確定した日の属する年分(事業年度)」です。
助成金に関しては個々の事実関係によって異なりますが、国や地方公共団体から助成金等の支給を受ける場合には、原則として「その助成金等の支給が決定された日の属する年分(事業年度)」に計上します。
今回ご紹介したキャリアアップ助成金については、この原則的な取扱いに準じて収入(収益)を計上するものと思われます。
具体的には、支給申請書を提出後、申請が認められた場合には支給決定通知書が届くことから、当該通知書に記載されている日付を見て判断することになるでしょう。口座に入金された日ではないことに、ご注意ください。
この助成金は、2023年10月1日以降の取組に対する助成であるため、2024年4月以降に支給申請書の提出が始まります。助成金の支給を受ける場合には、収入(収益)計上時期にご注意ください。
なお、助成金は期間限定で支給を受けるものです。今回の助成金については、支給期間終了後の手当や所定労働時間の取扱いも視野に入れて検討をする必要があるでしょう。また、対象となるスタッフにのみ手当を支給するなどの行為は、他のスタッフとの間に不均衡が生じることとなるため、配慮が必要となります。これらの点にも十分留意しながら、助成金に関して検討なさるとよいでしょう。